広告批評

ホンダ・オデッセイのCM遍歴とキャッチコピー考察

自動車産業はメディアにとっては大きな広告主でもあるわけですが、そのぶん魅力的なキャンペーン、熟考されたキャッチコピーなどが多くて勉強になります。この記事では、ホンダ・オデッセイのTVCMを振り返ってみました。

1994年、初代オデッセイのTVCMはアダムスファミリーと

キャッチコピーは、「うれしい、たのしい、あたらしい。幸せづくり研究所。」。

映画のキャラクター「アダムスファミリー」を起用したクリエイティブで、家族で乗れるワゴンカーとしての地位を確立します。
TVCMというか広告は、コンセプト、キャッチコピー、表現アイディアの3つを軸にして作ると思うのですが(プロはもっと複雑に考えているかもですが)ここまでこの3要素が説明しやすいTVCMもなかなか無いですね。勝手CM、学生広告などを作るにはお手本になるのではないでしょうか。
(この記事を書いている2018年段階だと、幸せづくり研究所というコピーはちょっと古さを感じますが)

アダムスファミリー起用のCMは5年ほど継続

冒頭から、アダムスファミリーのキャラクターが片言の日本語で「しあわせ?」と問いかけてくるパターンで、記録が定かではないものの5年以上は同様のTVCMでバリエーション展開していたはず。

上記のCMはアダムスファミリー期の最後のほうのCMですね。

それがどのように勝ちパターンを脱却し、今日まで地位を確保し続ける車種になってきたのか、TVCMを追ってみてみましょう。

2003年、ドリカムのCMソングで訴求

2001年頃のTVCMは「オデッセイ、ですね。」というキャッチコピー。この頃はオデッセイが絶好調で、家族持ちのパパといえばオデッセイというイメージが確立していたように思います。もはやなにも訴求していないに近く、王者だからこそできるイメージ戦略といえるでしょうか。

また、上記の動画は2003年頃のもので、キャッチコピーは「ミニバンを、発明し直しました」「NEXT PROPOTION」というもの。
すでに王者なので、オデッセイについて認知度がある前提でTVCMをしており、製品がさらに改善されたよ、と伝えるだけで成立するということなんですね。

2005年、オデッセイは裸の王様的CMに?

2005年頃も同様。ちょっと気になるのは、2003年から一応「NEXT PROPORTION」という英語コピーがあるのですが、2005年になってくると、ナレーションだけで「NEXT PROPORTION」って言ってて文字としては出てこないんですよね。

一応PROPORTIONって割合とかいう意味らしいのと、オデッセイとしてはエンジン配置を見直したので7人乗りだけど快適な座席ですよ、ということを言いたいらしいのです。

ただ、視認性もないし、意味がすぐ通じるコピーでも無いし、今だとあまり使わないタイプのキャッチコピーなんじゃないかなぁ?と思うんですけど。
アダムスファミリーのCMが「学生広告のお手本」と言いましたが、逆にこういうCMは、例えば学生が提案したとしたら「意味不明」で終わっちゃうと思うし、プロが提案してクライアントが通してたとしても、ちょっと視力が悪くなってきてるのかな?と思わなくもないと言いますか…

なんだかオデッセイの不調の始まり?なのかと不安になり、この考察が当たってるか販売台数など確認したところ、2004年の年間10万台をピークに、2017年は2万台くらいになってるとのこと。

もちろん競合要因、若者の車離れ、ファミリー層の可処分所得などなどあり、広告だけのせいとはいえないのですが、ここから苦戦しているなぁと思うCMもいくつか見かけたりします。

2008年、オデッセイはリブランディングしてキャッチコピー刷新

2008年頃に、オデッセイはキャッチコピーを一新。「いいクルマが好きだ。男ですから。」というコピーにリニューアルされ、TVCMの雰囲気も一気に変わりました。

ジョージ・クルーニーを起用し、CMソングにはBee Geesの「Stayin’ Alive」。雰囲気良いCMに仕上がっており、好感度は高まるCMです。

7人乗りのミニバンなんだけど、子どもはあまり乗らないからひとりで使うことが多い。けど、たまに7人載せることはあるからミニバンである必要はある、と、そういう父親像をターゲットにしているわけですね。

あとこの時代、軽自動車が席巻してきていることも、このキャッチコピーにたどり着いた要因でしょう。
「自分の彼氏や自分の夫が軽自動車に乗るのって、どうなの?」といった世論がこの時あったと思います。
2018年時点では、男性も軽自動車にバンバン乗ってるし、そういうライフスタイルを是とする世の中であります。実際、2017年ホンダで一番売れた自動車は軽自動車のN-BOXですからね。

2008年時点のオデッセイに立ち返るとですね、ファミリー向けミニバンというカテゴリーから逃げられない一製品が、どうやって広告や販促などマーケティングだけでここから起死回生をするのか、いやまたは防衛ラインを下げながらカテゴリーを存続させていくのか、というのは、広告好きとして良い材料なんですね。

2013年、「美×力」で高級感押し

2009年頃まで展開されてたジョージ・クルーニーのCMのあと、ちょっとWeb上ではホンダ・オデッセイのTVCMを見つけることが叶わなかったのですが、2013年のTVCMがこちら。

キャッチコピーは「美×力」。
表現手法としては高級感、可処分所得高め、あたりがイメージされるでしょうか。

この時代にもなると、明確に少子化傾向、購買層の平均年収低下などが如実にでているであろうことで、逆に可処分所得が高いファミリー層にしっかり刺さるようなCMを狙っているようなことは考察できます。

2013年のCMでもう一本あったのでこちらもどうぞ。

2013年、「そして、オデッセイにたどり着く」

やはりこちらも、可処分所得が高いファミリー層にしっかり刺さる訴求にまとめているような印象。かつての「幸せづくり研究所」というファミリー全体をターゲットとした戦略からすると結構想像がつかないくらいコンセプト変わってますが、「高級ミニバン」にしっかり振り切っているというわけですね。

でもちなみに、高級ミニバンカテゴリーでいうと競合はアルファードやヴェルファイアなどになってくると思うのですが、この時点でホンダ・オデッセイはこれら2種にも販売台数で負けてますからね。

ホンダを代表する高級ミニバン・オデッセイは、どのようにしてかつての栄光を取り戻すことができるのでしょうか。
次のページを読む
1 2
Share:
nomadoworker